巡回相談や子育て相談で環境や子ども達を評価する時に感じていることですが
評価には doingを実現するためのものと、becomingを実現するためのものがあると思っています。
何かをすること Doing
何かになる Being
何かになっていく Becoming
doing 〜をする
「 洋服が着る,友達と遊ぶ,友達と叩かずにいる,教室に入る,教室で授業を受ける…」
何かをすることです。
becoming 〜なっていく
「 保育園生として自分で服が着られる,幼稚園のクラスメイトと遊べる,年長さんとして友達と物の貸し借りを叩かずに相談できる,クラスの一員として教室に入れる,同級生と一緒に頑張って授業に取り組める…」
家庭や学校の社会の中で「息子として」「兄として」「年長組として」「友として」それができる存在になることです。社会の中で役割を担うことであり、その存在として目的を持ってそれができるということです。
【 doingとbecomingの支援の違い 】
巡回先の相談の多くは doing のためのアドバイスを求められます。
「どうしたらできるようになりますか?」「どうしてできないのですか?」「障害がありますか?」
できない原因や、できる方法を求められます。
でも、子供達の成長を人生レベルで考えるのであれば、doing「何かをできるため」だけの関わりは、意味がないと感じています。その瞬間の何かに変化をもたらすことには効果がありますが、人生レベルの効果を考えた場合です。
例えば
「片付けない!片付けさせて欲しい」と悩むお母さんに、息子さんが片付ける方法を考えることは簡単です。評価の視点は「片付けられない問題の原因」の解明になります。
⚫︎ 片付ける手順の組み立てる力に課題があれば、おもちゃ箱を一つにして放り込めば良い物とするなど環境設定。
⚫︎ 達成感を感じにくいのであれば、片付けたらシールを貼ろうねと実績を可視化する。
でも、その後に必ず次の問題が出てきます
「続かない」「言わないとやらない」「言っても聞かない」
一方、becoming 「何かになっていく」ための関わりを考える場合、できることも大切ですがもっと重要なことは何のためにそれができて欲しいのかという 目的 です。片付けを通してどんな存在になって欲しいのかです。
例えば「片付けさせて欲しい」にも必ずお母さんの思いがあります。
もし母親が「自分のことは自分でやろうという責任を持って欲しい。だからおもちゃを出したら片付けて欲しい」と思って片付けを願うなら
「自分が出したから」と片付けようとする息子の姿勢が重要になります。
評価の視点は「息子として片付けられる」を実現することですので、
その子の力(機能)
いつ、どこで何を、どのくらい片付けるのか(環境)
親と子供にとって”片付け”に込める意味(作業)
についての総合評価になります。 この辺のことは長くなるのでここでは割愛します。
片付けられるか否か?よりも、家族の中の一員として、息子として自分の物を片付けるという活動を、息子自身が選択し実行することが、この相談における達成となります。
「家庭で自分のことを責任持って考えらえる息子になる」 becoming
その結果、オモチャを片付けられるということです。
【 becomingは人生レベルの成長 】
「幼稚園生としてみんなと竹馬に乗れた」
「小学生として学校に自分で登校できた」
「お母さんを助ける娘としてお皿が洗えた」
「クラスの一員として50m走れた」
巡回相談で先生と一緒に実現していった子供達のストーリーには、どれもその先があります。
もともと全て支援員に任せていた脳性麻痺の女の子は、みんなと竹馬を練習しはじめると同時に、脳性麻痺を理由に友達と別行動することはなくなりました。支援員に頼ることなく、毎日自分の準備は時間をかけて自分でやるようになりました。それは彼女が自ら選んだことでした。竹馬を頑張るということも、身支度を頑張るということも彼女にとって大切なことだからです。
女の子は幼稚園生として、クラスメイトとして、それをすることを選んだのです。
「竹馬に乗る」といった動作の達成ではなく
「幼稚園生として友達と竹馬に乗る」という役割の実現は、
その役割の先にある活動、生活、人生すべてに影響を与えます。
子ども達の成長に重要な支援とは
こういった人生レベルの支援だと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。