2014年4月1日火曜日

実態把握は何のため?




実態・・・教育の世界では「現場の理解」「様子」について「実態」と言います。




学校と家庭の連携において、この「実態の共有」がうまくいかないと言う悩みをよくお聞きします。

「子どもの状況を親が理解しようとしない」
「学校での様子と、家庭での様子が違う」
など、実態を理解してもらうことや、実態を共有することに課題を感じているようです。

どうしてこのような課題が出るのでしょうか。
子供の状態を評価する力が足りないからではないか?
家族に説得する面接の力が足りないからではないか?

それもあるかもしれません。しかし一番重要なことは共有する「目的」なんだと私は思っています。



「実態」とはなんでしょう。


ある保育園の男の子がいました。

先生が
「トイレが未自立です。ウンチはトイレでできません。わざわざパンツをオムツに履き替えて、そのオムツにウンチをします。」
と話しました。

お母さんにお話を聞くと
「トイレは困っていません。失敗はありません。トイレでウンチをするのが怖いのか、オムツにします。自分でオムツを取ってくるんです。」
と話しました。

保育園では、トイレ未自立
家庭では、トイレ困っていない

どちらも間違っていませんが、お互いの認識している実態は合っていません。


先生が心配していました
「お母さんは問題に気づいていない…」

そして今までの経験上、この実態把握のままの面談ではなかなかうまく行きません。
問題に気づかせようとする保育園と、問題ではないことを理解してもらいたい家庭側とで溝があるからです。



さて、大切なことは実態を把握する目的です。
先生に聴きました
「トイレはどうなってほしいですか? それができることはどうして大切ですか?… 」
先生は言いました
「彼は再来年幼稚園生になる。そこではいろいろな活動がある。今のように遊ぶだけでなく、友達と一緒にものを作ったり、勉強だって始まる。野外活動も多くなる。彼は一人でいろいろとこなして行くことは難しいだろう。でもね、彼は人を惹きつける魅力がある。あの可愛らしい笑顔と、優しい雰囲気は、手伝いたいという想いを周りに起こさせる。彼のあの魅力を活用して、友達と一緒に活動に参加できる環境を作りたい。
そのために、友達と距離が空いてしまわないよう、身の回りのことを自立させてあげたい。ウンチを今のように人前でパンツを脱いで、オムツを履いてすることは、友達に嫌がられてしまう…」

この語りから、先生が『周囲に迷惑をかけない方法でトイレができる』ことを大切にしていると分かりました。


母親に聴きました
「保育園でどんなことができることを願っていますか?」
母親は言いました
「息子が学校に行きたいと思えることを大切にしたい。できないことや嫌なことに我慢する毎日ではなく、友達に助けてもらいながら、いろいろな活動に楽しく参加してほしい」

この語りから、お母さんが『学校での活動を楽しいと思えること。その実現に友達の協力も期待したいこと』を望んでいると分かりました。


お二人がそろった席で聴きました。
「先生は幼稚園でいろいろ新しく始まる活動に友達の協力の輪の中で参加してほしいと願っています。そしてお母さんもまた、息子さんが学校生活を楽しめることを願っていますね。友達の協力の輪の中で。
その実現のために先生は ” 周囲に迷惑をかけない方法でトイレができる”ことを叶えたいそうです。
そこで、学校と家庭の様子から、” 周囲に迷惑をかけない方法でトイレができる”というトイレの実現に向けて、課題となること、そして、うまくできていること を共有したいのですがいかがでしょうか?」

その話し合いの中で先生と母親は以下の点をあげていました。

  • 課題となること①人前でパンツを脱ぐ、②ウンチをしたオムツを放置していること
  • うまくできていること①ウンチを洋服に漏らさない、②ウンチがしたい時はソワソワしてわかる、③オシッコは自立している、④オムツの場所を自分で知っていて準備できる


その話し合いの結果、支援が決まりました。
1)ウンチが怖くないことを絵本を使って教える
2)オムツのストック場とゴミ箱をトイレの中にする
3)パンツを脱ぐ人に見られない場所を決める

全ての実態共有の目的は…
全ての支援の目的は…
「 周囲に迷惑をかけない方法でトイレができるというトイレの実現に向けて」


何のために実態を把握するのか?
何のために評価するのか?
何のために情報を提示するのか?

全ては子供の将来のために今大切なことを実現させるという「目的」が重要なんだと思います。




みんなの目的を明確にできるために