2015年9月2日水曜日

子どもが友達をたたく理由



沖縄はお盆が終わり、エイサーの音が聞こえなくなりました。夏の始まりとともに聞こえてくるエイサーの練習の音も、街中活気溢れた本番お盆の踊りも大好きです。残すは9月27日に十五夜です。


この時期が本当に文化あふれていいですね。





さて、本日の子育て座談会
内容は
「子どもがすぐ友達を叩いてしまうのですがどうしたらいいでしょうか」について




「たたく」行為は友達を傷つけてしまうから、止めないわけにはいきません。
でも親も先生も本当は子どもと一緒に向き合いたいと願っています。
生活の中でそんな子と親の関係を築けるヒントになることを今回のブログは目的としています。



「友達を叩いてしまう」ということには様々な子どもなりの理由があります
今までの相談で出会った子ども達にもいろいろな理由があった中から6つをご紹介します。

理由1.気持ちが高ぶって叩いてしまう 
理由2.刺激が欲しくて叩いしまう(叩くことに本人は理由はないが)
理由3.力加減ができず触れたつもりが叩く結果になってしまう
⇒この理由に悩むお子さんの多くは、本人は叩いてしまったことに後から気付き悩んでいることが多いです。

理由4.”叩く”以外のコミュニケーション・問題解決方法が持てない
理由5.叩いてはいけない道徳的なことや相手が痛いと感じることの理解が苦手
⇒この理由に悩むお子さんの多くは、普段から友達と遊びたいのに上手くいかないと悩んでいることが多く、友達と楽しく遊べる方法を本人が探していることが多いです。

理由6.自尊心が低く叩いてしまう
⇒叩く度に「自分はダメな子なんだ」と本人が苦しんでいます。自分がみんなに認めてもらえることを探しているお子さんが多いです。





ここでこれらの理由を挙げたのは、その理由を理解することも大切ですが、それ以上に子どもは「叩きたくて叩いているわけではない」ことを私達大人が信じるためです。




それをふまえて叩いてしまう子どもと向き合うときに大切なこと
 
 どの理由にせよ、本人が苦しんでいます。「叩く」という行為に対し叱ることは重要です。その後必ず「どうしたかったの?」と聞いてあげてください。それを本人が答えられなかったとしても、そう聴いてくれる親の姿勢に、子どもは常に変わる(成長する)チャンスを持ち続けられます

*ちなみに、”叱る”ということは”怒る”とは違います。辞書的には大きな違いは記されていませんでしたが、私自身は相手のために伝える場合を”叱る”と認識しています。ですから、相手(子ども)がなぜ叱られているのか、しっかりと分かる状況が重要です。またこの話は別でまとめます。


 上記の理由は、年とともに成長し消えていく理由もあります(中には経験を積んで学ぶこともありますが)。その成長を待つ前に自分自身に感じる価値観(自己肯定感)が下がってしまうことが一番心配です。子ども自身が成長するチャンス(失敗してもそのことだけで僕を判断されてはいない。僕は変われることを期待されている)を実感し続けて、「今」を過ごせることが大切ですね。












2015年6月11日木曜日

宮古projet 幼稚園と保育所の巡回相談

宮古島の海
沖縄に住んでいる自分でも格別宮古は綺麗だと思う。

新しくできた伊良部大橋より


友利さんと宮古島に来ています。
宮古島に「届けたい教育」に焦点を当てた支援を届けるために。

1日目は幼稚園、2日目は保育所



2日目:保育所の巡回相談

来年度小学校を予定している5歳の男の子の相談でした。

先生は「以前は一人遊びばかりで友達と興味を持つこともなかったので、友達との関わりは成長したんですよ」と男の子の成長を感じている反面 「でも…小学校に向けて本当にこれでいいのか心配です」と今取り組んでいることに不安を感じていました。

その男の子は遊びでも、整列や片付けなど集団行動でも、やり始めることに時間がかかり、声かけが必要とのことでした 。

早速、巡回相談の目的を伝え、ADOC-Sを使い目標を設定することとなりました。
取り組みに協力的な所長さんの計らいで、保育所のすべての先生が参加しての面談となりました。
担任の先生、去年度まで関わっていた先生、別のクラスから成長を見守ってきた先生、保護者の声を受け取ってきた所長さん、
みんなが意見を出し合い、小学校に向けて男の子に今届けたい保育が話し合われました。

「年長さんとして率先して行動できてほしい。」
「友達と一緒に遊んでほしい!その中でいろんなことへの興味関心を育てたい。」

男の子に期待したいこと、可能性を感じること、みんなの想いを互いに出し合い
目標が決まりました。そして、その午前中観察させてもらったことから 目標を実現するための情報を提供しました。



 担任の先生は、これでいいのかと毎日悩みながらも、様々な取り組みをしてきていました。
具体的な目標を立案し、どうしてできないのかどうしたらできるのかみんなで考えたことで、
はじめて、先生の今までしてきた取り組みは、すべて目標につながるものであったとわかりました。

そのことを知り、涙目で「よかった…」と語る先生達。
この保育所の環境の中で、きっと男の子は成長していけるだろうと思います。



帰りに保育士の先生が言っていました。
「 これまでにも巡回相談は何度かありました。今度もまた何を言われるだろうかと不安でした。自分のやりたい保育に直結したアドバイスをもらったのは初めてです。嬉しかった。」

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 先日も巡回先の保育園で園長先生が言っていました。 
「専門家が来てアドバイスしてくれるのはいいけれど、診断して障害に応じた対応方法を指導する。でも、それでは子供は育たないんだよ」

昨日ヒヤリングした校長先生も言っていました。 
「どんな障害があるという情報提供はもういらないんだよ」


私たち専門家の役割はなんでしょうか。
私は、子供たちの社会参加を現場の先生たちが、実現していけるよう支えることがだと思っています。

そのことを前提に言わせてもらえるのであれば、障害という言葉で不安にさせるアドバイスではなく、届けたい教育や保育の実現に向けた目標設定と情報提供が重要だと思います。


先生の届けたい保育や教育は、クラス全体を考えてのものでもあり、クラスづくりを通してその子に届くことが、インクルーシブ教育の視点として重要だと思っています。

8月にそんな話を深めていきたいと思っています。


また来ます!宮古島
ここから私達は 日本の教育に発信していける 教育と保育の環境をつくっていこうと思っています。



ありがとうございました※*

  







2015年6月1日月曜日

勉強が好きになるために、今からできる子育て


保育所の巡回相談の一環で「子育て座談会」をはじめました。

「授業中落ち着きがない」
「宿題ができない」
など小学校では相談が多く、いつも小さい頃からのベースづくりの大切さを感じていたので、第一回目のテーマは

「勉強が好きになるために、今からできる子育てのコツ」



座談会の目的

勉強は5歳ぐらいから考えればいいのですが、実は乳幼児期からの関わりが、子供の集中力や、意欲、考える力など勉強(その他多くの活動)に必要な基板を作っています。そのことを知ることで、親御さんが、今の一つひとつの子どもとの関わりに目的とやりがいを感じていただけると幸いです。



座談会の内容

子ども達が将来勉強を楽しく取り組めるために、大きく3つの土台を育てておく必要があります。
1)安定して座れる力(姿勢保持)
2)頑張ろうと思える心
3)考える力(創造力)

まず、第一回目は上記3つの力の中で「姿勢保持と遊び」についてみんなで考えてみました。


「姿勢を保つ=重力に打ち勝つ」ですので、自分の身体の重さを感じながら遊べる活動が重要です。赤ちゃんの頃のハイハイ(四つ這い)は手を床につき、移動する度に四肢にかかる重さが変わります。赤ちゃんはボールを追っかけるなど楽しみの中で、その自分の身体を支える練習をします。

幼児期になるとますます身体が発達し、ジャンプ、落ちる、転がるなど、親が見ているとハラハラする活動を始めますね。「怪我をさせたくない」その思いは親なら当然のことですが、この時期に自分の身体の重さや、高さと感覚の違い(高いところから落ちると足が痛いなど)を感じ、重力に対し自分の身体をどのように「支えたらいいのかな?」を無意識で調整できるように育てていくことも重要です。
ちなみに、”大怪我”になる前に危険を感じ自分の行動を抑制できるためにも重要です。ですから、大きな怪我をさせないためにも、転ぶ経験、ちょっと高いところから飛んでみる経験も大切なんですね。

「椅子に座る」ためには平らな座面に身体を合わせ(ちなみに座位は立位よりも姿勢を保つことが大変です)、手を使うために身体が揺れないように支えつつ、字を書くために微細な重心移動に無意識で反応できなくてはいけません。きめ細かい姿勢の変化を、楽々できることが勉強(読書・人の話を聞く等様々な活動)に集中できるためにもっとも重要です。

どんな遊びがあるの?

高い高い、滑り台、ジャングルジム、家の柱にぶら下がる、走る、駆け下りる、芝生ソリーなどなど、特別なことではなく、親が身近に行っていること全てが子供の成長につながっています。

危険すぎるときはどうしたらいい?「だめ!」と動作を抑制するだけでなく、「ここから飛び降りれるかな?」と本人に考えさせてあげる止め方がいいでしょう。それでも危険認識が薄い場合は、自分の身体をまだ理解できていませんので、上記の遊びを多く取り入れ親子で遊びを通して学んでいきましょう。また、危険なものをどける、飛び降りる場所にクッション(布団でも可)など置いてあげることも重要です。

小学校3年生の息子が姿勢が保てない。もう遅い?姿勢づくりに手遅れはありません。子どもはスポンジのように身体も頭も成長します。どんどん関わってあげましょう。







2015年5月11日月曜日

子ども達の人生を支援する ーBecoming 存在を実現することー


鳥取に出張で来ています。久しぶりに電車の長旅で、ゆっくりブログを書いています。




巡回相談や子育て相談で環境や子ども達を評価する時に感じていることですが
評価には doingを実現するためのものと、becomingを実現するためのものがあると思っています。

何かをすること       Doing
何かになる              Being
何かになっていく   Becoming


doing   〜をする
「 洋服が着る,友達と遊ぶ,友達と叩かずにいる,教室に入る,教室で授業を受ける…」
何かをすることです。

becoming   〜なっていく
「 保育園生として自分で服が着られる,幼稚園のクラスメイトと遊べる,年長さんとして友達と物の貸し借りを叩かずに相談できる,クラスの一員として教室に入れる,同級生と一緒に頑張って授業に取り組める…」 

家庭や学校の社会の中で「息子として」「兄として」「年長組として」「友として」それができる存在になることです。社会の中で役割を担うことであり、その存在として目的を持ってそれができるということです。



【 doingとbecomingの支援の違い 】 

巡回先の相談の多くは doing のためのアドバイスを求められます。
「どうしたらできるようになりますか?」「どうしてできないのですか?」「障害がありますか?」
できない原因や、できる方法を求められます。
でも、子供達の成長を人生レベルで考えるのであれば、doing「何かをできるため」だけの関わりは、意味がないと感じています。その瞬間の何かに変化をもたらすことには効果がありますが、人生レベルの効果を考えた場合です。

例えば
「片付けない!片付けさせて欲しい」と悩むお母さんに、息子さんが片付ける方法を考えることは簡単です。評価の視点は「片付けられない問題の原因」の解明になります。
⚫︎ 片付ける手順の組み立てる力に課題があれば、おもちゃ箱を一つにして放り込めば良い物とするなど環境設定。
⚫︎ 達成感を感じにくいのであれば、片付けたらシールを貼ろうねと実績を可視化する。

でも、その後に必ず次の問題が出てきます
「続かない」「言わないとやらない」「言っても聞かない」



一方、becoming 「何かになっていく」ための関わりを考える場合、できることも大切ですがもっと重要なことは何のためにそれができて欲しいのかという 目的 です。片付けを通してどんな存在になって欲しいのかです。

例えば「片付けさせて欲しい」にも必ずお母さんの思いがあります。
もし母親が「自分のことは自分でやろうという責任を持って欲しい。だからおもちゃを出したら片付けて欲しい」と思って片付けを願うなら 
「自分が出したから」と片付けようとする息子の姿勢が重要になります。

評価の視点は「息子として片付けられる」を実現することですので、
その子の力(機能)
いつ、どこで何を、どのくらい片付けるのか(環境)
親と子供にとって”片付け”に込める意味(作業)
についての総合評価になります。 この辺のことは長くなるのでここでは割愛します。

片付けられるか否か?よりも、家族の中の一員として、息子として自分の物を片付けるという活動を、息子自身が選択し実行することが、この相談における達成となります。
「家庭で自分のことを責任持って考えらえる息子になる」 becoming 
その結果、オモチャを片付けられるということです。 



 【 becomingは人生レベルの成長 】 

「幼稚園生としてみんなと竹馬に乗れた」
「小学生として学校に自分で登校できた」
「お母さんを助ける娘としてお皿が洗えた」
「クラスの一員として50m走れた」
 
巡回相談で先生と一緒に実現していった子供達のストーリーには、どれもその先があります。

もともと全て支援員に任せていた脳性麻痺の女の子は、みんなと竹馬を練習しはじめると同時に、脳性麻痺を理由に友達と別行動することはなくなりました。支援員に頼ることなく、毎日自分の準備は時間をかけて自分でやるようになりました。それは彼女が自ら選んだことでした。竹馬を頑張るということも、身支度を頑張るということも彼女にとって大切なことだからです。
女の子は幼稚園生として、クラスメイトとして、それをすることを選んだのです。


「竹馬に乗る」といった動作の達成ではなく
「幼稚園生として友達と竹馬に乗る」という役割の実現は、
その役割の先にある活動、生活、人生すべてに影響を与えます。


子ども達の成長に重要な支援とは
こういった人生レベルの支援だと思っています。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


 

2015年3月9日月曜日

OTMAG 2015〜岐阜〜

岐阜県羽島で開催されたOTMAGに来ています。


舞台裏でコーヒーを挽き
鰹節をひいて山の水で煮出した出汁で味噌汁を作り
漬物をつけてくる
そんな研修会です(笑)


さて、私はトップバッター…
初の大役緊張しました。
「みんなで決める子ども達の目標」が私のテーマ。





みんなの"届けたい"を目標にする

 学校に巡回相談に行くと、専門家に対し先生方は悩んでいる問題を話されることが多く、その問題を解決してくれると期待されやすい。しかし、問題を解決するのであれば、この問題行動の原因を分析し対処することになります。

問題行動の要因…
  • 器質的要因は今すぐ治すことができません(もちろん器質的要因を見ないのではありません。その回復や維持だけを目的にしないということです)
  • 家庭環境の要因は親の生活が影響しているため学校の先生が関わりにくい。
  • 生活歴の要因においては過去のことなので変えることが出来ません。
そんな「いつ解決するか見通しが持てない問題」と向きあう面談では、障がい児に産んでしまったことや、良い関わりができなかったことなど、子どもに関わる親や先生が苦しい思いをさせてしまう恐れがあります。



 しかし、問題を感じるのはその子に先生・親が届けたいことがあるからです。この「願う生活」「届けたい教育・保育」「僕がしたいこと」みんなのやりたいを目標にし、実現することを目的に支援をしよう!
これが私達ADOCprojectのコンセプトです。

楽しい!ずっとやりたかった!明日からワクワクする!
そんな思いから支援を始めたい。
全ての人が当たり前にやりたい事を選択できる。
それが私達の願いです。





達成したいことのある支援

 先生達は毎日忙しい中、子ども達の問題に追われてきた経緯があります。「さあ!目標を立てましょう」…といっても、目標を立案すれば達成しないといけない支援の不安があるようです。

 目標を立案する、ということは「叶えたいことを思い描く」ことであり、仕事上のtaskではありません。
例えば「友達と学び合ってほしい」という目標に対し
⇒まずは互いに関わる機会を作ろう
⇒掃除という関わる機会の中で子供が変わった
⇒友達も変わった
⇒その様子を見てまた次は運動会でもやってみよう
⇒一歩先が見えてくる…

 常に「達成したい先を見続ける支援」は、なかなか叶えられない不甲斐なさに悩むことはあっても、子供の未来に不安を抱き「これでいいのだろうか」とエンドレスな悩みを抱くことはありません。
 そして「見てください!掃除してるんですよ」「聞いてください!子供たちで教えあったんですよ!」子供の微細な成長も、確かな変化として先生が捉えられる。支援への安心・感動 「支援にやりがいを感じ、変化を実感し喜べる」

目標を持つということは、そんな支援を実現することにつながるのです。



今回の講演では、その他にも目標を持つことの効果や、目標の立て方、先生と保護者が協働関係を築く面接方法などお話させていただきました。





作業療法士の役割

 私達は、面接を通して、先生と保護者の「問題解決」という視点から「届けたいことの実現」という視点へと変えていき、適切な情報収集と提供によって、本人・先生・親のエンパワメントを支持し、主体的に支援に参加できることを実現する。そのようなコンサルタントとしての役割を求められています。
 私達は医療の専門家であり、子ども達の身体的・精神的・認知的機能を含むあらゆる要因を見る力も持っています。しかし、それらの情報収集と提供が、先生や親の「やりたい」を止めてしまうものであるならば、その情報は全くの無意味だと思うのです。
 情報について、提供すべきタイミングと質、形(写真を活用するなど)を適切に選択・調整できれば、クライエントのやりがいに繋がり、主体的に動き出す原動力になり、自信につながり、生活を変えていくことを支えられるのです。




 不安でたまらない支援ではなく、子供の将来を期待し、成長に感動できる支援を実現させていきましょう。インクルーシブ教育が始まり、子ども達の社会参加が保障されつつある今、作業療法士としての役割を強く感じる毎日です。



今回、このような機会を作ってくださった山口さんをはじめOTMAGの皆様
暖かい雰囲気で聞いてくださった会場の皆様
本当にありがとうございました。






2015年2月9日月曜日

第2回 日本臨床作業療法学会 in OKINAWAーこども分科会ー




2月7日〜9日に沖縄で行われた日本臨床作業療法学会、はじめの2日間は分科会.
楽しい分科会でした.まずは各発表の概要です.

山口さんの講義
この分科会の目的は共創
「みんなの作業療法の物語を作る」「盛り上げて参加型で!」



Whyが重要
「みなさんはなぜ沖縄に来たんですか?なぜこの分科会に参加したのですか?」
幼稚園の先生のWhyを共有し,先生のWhyから始まる集団プログラム,遊びの提供を大切にしている.

なぜOBP
 子供達のポテンシャルを引き出せる!「参加」の中だから引き出せる。外来で子どもを見ていた経験からわかった。箱(病院)のなかでは絶対解決しない、街に出た。作業にはパワーがある!問題解決はひとつ問題を取り除くとまた問題が出てくる。問題解決型から自己実現型へ。
実際の先生の変化。受け身でOTにおまかせだった先生⇒「OTより私達が上手よ!集団は私達の専門だもの」と先生。

OTは最高の技術を持った黒子になれ!
クライエントの作業の実現が,生活に、人生に波及されていく…





続いては
成瀬さん:PT(福井大学医学部付属病院)
「本ケースが自分にとって衝撃的だったので、皆さんにご意見をいただきたい」と発表の目的を語ってスタート。


心因性の歩行障害。機能面での問題は全くなかったのに 歩けない6年生の男の子との関わりを通して、PTとしてのアイデンティティを考える機会となった。
「彼と関わる中で、A君が変わるり、A君の様子を見てPT(僕)も変わっていくことを感じた」と話す。

成瀬さんは他職種(PT)としてOTの存在について語ってくれた。「PTは歩行訓練をするが”何のために歩きたいのか”その目的を重視する視点を持っていなかった。OTと仲良くなりたい。





高畑さん(奈良県総合リハビリテーションセンター)
本研究と発表の目的について「SIの効果研究は僕のアイデンティティ。エビデンスのなさを指摘された過去の経験が自分を動かしている」と語る。

字が読めないLDのお子さんについて、”字を読む”の技能のベースとなっている,姿勢・両側統合・視機能の改善に介入し、読字の改善に影響を与えたことを報告した。
字を読めない⇒「楽しい作業」を通して書字能力を向上させたい!





狩野さん(奈良県総合リハビリテーションセンター)

 友達のペースについていけず,学校の準備が遅く,友達と一緒にできる遊びがすくなかった男の子。何事も「できない」「わからない」が口癖だった。
どうしてできないのか?その原因であった#自身の動きとイメージができない,#遊びのアイディアが出ない,#順序立てられない の改善に向けた介入で,できる事が増えていった。
一番の変化は…「〜しよう」「やってみよう」と意志が生まれたこと。

CLが作業を選択していくために重要な,「したい」「やってみよう」を支える作業療法でした。






− 2日目は私の講義からスタート −         
仲間 講義
なぜ作業に焦点を当てるのか?
  1. 今生活を変えることができる
  2. クライエントが主体になれる
  3. 協働関係を築ける
  4. エンパワメントを引き出せる

1.子どもの今できるようになってほしい作業は、今することに意味がある。作業ができる事で人と人をつなぎ、人と社会をつなぐ。つながった人と社会(友達・先生)は作業を通して影響しあう。作業ができる事は,人を育てその子が人生を共にする社会を育てる

2.自分のしたいことだから、CLは主体的になれる。OTが扱う作業遂行の情報は生活リスク。医学リスクは生活を制限するが、生活リスクは生活の可能性を引き出す

3.作業の実現に向けた協働関係の上で,誰もが笑顔で支援に参加できる。作業療法士はこの共同関係の中にいる存在であり、かつ協働関係を支える黒子の存在でもある。

4.人と人、人と社会がつながった生活の中で,支援される側もする側も最高のパフォーマンスを出そうと自分で問題を解決していく。そのエンパワメントにすごい力がある。





山口さん
「保育士が専門家の手を離れ、先生が支援計画を立案し子どもの行動を変容していくべきなんだ。」

ADOC-S+GASで目標を保育士が主体的に設定していくことの効果を研究。遂行度より満足感が強く向上することなど,その効果を報告。
「GASによるスモールステップを明確にすることで,保育士が子どもの成長の変化を捉えることを助ける」
「GASを面接で取ることで、いつ どこで どんなふうに、という具体的目標として浮き彫りになる。同時進行、時間短縮、面接の技術のサポートが期待される」





村上さん(キャスパーアプローチ)
「いまできる」を支える重要性をケースを通して報告。
治療をするのではなく、今生活を変える。姿勢を安定させることは「手段」大切なことはその先ににある。その時に、その瞬間、それができることの大切さがある
やりたいと思うからこそ力になる。開放された環境でないと子どものパワーは出ない「設定された環境では出ない」 障がいに合わせた椅子作りではダメなんだ!やりたい事を実現するために道具を作ることが自分の役割。

「人工的に作った目標は本来の人間の本能を無視している」と近藤さん。
「目標を決めるおこがましさを考えさせられる」と山口さん。





佐藤さん(奈良総合リハビリテーション)

自分を感じられないから,人を意識できなかった男の子。自分を意識できるように身体図式を改善していくための遊びの段階付(輪郭 Passiveから運動 Active)を行った。
人とのつながりの中の自分を意識できるようになってほしい!

子どもが作業を選択していくために,自分を知り,他者を意識し,そして社会の中の自分の存在価値や役割を意識できることが重要。今回の発表はそのベースを育む作業療法でした。





今井さん(平谷子ども発達クリニック)
自分のしたいことについて「分からない」と答える子ども,「OTにお任せします」という母親に対し,OTの役割と目的を,本人と保護者に具体的に伝え,共に考えアプローチした水泳を通し,子どもと母親が変わっていった。

母親は子どもに期待したいこととしての目標を持ち,子どもは「これをする」と作業選択の力を持つことができた.





伊地知さん(するーぴーす)
乗馬を取り入れ、「行きたい!」の想いを育むことができた…しかし日常生活に変化をおこすことができなかった。とゆめさん。

「乗馬」という作業にOTが酔ってしまうことなく、CLの生活に本当に貢献できたのか?を自分自身で問う伊地知さんの発表は,CLの健康を本当に願うOTとして勉強になりました。
「自分も乗馬が好き。でも乗馬はキッカケ。」と比嘉一絵さん。
人生のキッカケを作る作業療法の視点を考えさせられました。




鯉田さん(奈良県総合リハビリテーションセンター)
保育士とOTの協働関係をつくるために始めた”こら弁”
鯉田さんの「質問していいのだろうか?」に悩んだ自身の経験から生み出された取り組みだった。

鯉田さんは人の2倍は早く生きている(笑)ような素敵な人でした。
何でも「まずやってみよう」でここまで試行錯誤していた、と飲み会でも語っていました。





近藤さん(小山田記念温泉病院)
お母さんをクラエントとして考える。「親は犠牲にならないといけないのか?」
子どものもっとも重要な環境である母親の健康を支え,子ども自身の作業選択を広げる取り組み。
OTはきっかけ。クライエントの作業はクライエントだけが知っており、クライエントが変えていける。作業療法は素晴らしい!にOTが酔ってしまうことはどうなのかな。
と沢山の問いを投げかけてくれた発表でした。

子どもの分科会は近藤さんの発表を優秀賞として選びました。
作業療法の真の目的を考えてほしい!分科会みんなの想いを載せて…








まとめ

「共創」を目的とした分科会。飲み会中も,ランチタイムも削って(笑)みんなで話し合って出した答え。この答えは変わっていくだろう。
でも今私達の進むべき子どもの作業療法のWhyとして,
参加したみんなの心に刻んでおこう!




「私達のやりたい作業療法とは?」

今 生活を変え
感動で支援に関わる人をつなぎ
みんなが笑顔で参加できる作業療法




その実現として,作業療法には重要な3つの役割がある!と確信しました.その各役割の重要性と可能性は,それぞれの発表者が示してくれました.

1)「やりたい」「やってほしい」のベースを支える介入
  • 歩けるをささえる:成瀬PT
  • 座れる,できる:村上潤
  • 「できない」「やってみよう」:狩野
  • 自分に気づき他者を意識することを支える:佐藤
  • 楽しみの詰まった遊び(乗馬)でそのキッカケを作る:伊地知
  • 環境(母)を健康にし子どもの作業選択を広げる:近藤

2)作業を発掘する介入
  • やりたいを具体的に段階づける:山口
  • クライエント主体:仲間
  • みんなが作業に焦点を当てられるためのADOC-S:仲間・友利・宇佐美
  • OT役割を伝えることで「やりたい」をひきだす:今井

3)作業遂行の実現を支える介入
  • クライエントが取り扱える情報を提供する:仲間
  • コラベンで作業療法士と先生の関係をつくる:鯉田
  • やりたい事を実現するために道具を作る:村上潤
  • 保育園の中の作業を出来る形にしていく:山口
  • 保育士の”できる”を支える:山口・仲間
  • 実現のための切り口を増やす:高畑
  • 根拠のある介入を支える研究:高畑・山口



終わりたくない…


また会おう!
また創ろう!
これからも共に!

2015年1月8日木曜日

作業遂行分析と作業分析

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次男がお願い!とやったガチャガチャ。怖いよね(笑)骨好き、お化け好き…



さて、この前学生が
「担当の方が料理がしたいと言っている。で、何をしたらいいのかわからない」と話しているのを聞いて、作業遂行評価は?と聞いたら「作業遂行?」と逆に聞かれ、まだメジャーな評価ではないのか…とややガッカリしてしまいました。

ちなみに教科書にはもう出ています。作業遂行評価を学生が当たり前に触れて体験できる教育体制を作らないとなぁ。と反省もしました。



クライエントの現状の機能ではできない作業を希望したらどうするのか?実習先で無理してでもさせるのか?

よく学生たちに質問されます。

座位保持もまだ困難な方に「旅行行きたい」と言われたら、旅行の作業遂行をするのか?

確かに難しいですねその前に外出許可おりないですしね。

でも、私達は「基礎作業学」という授業で、作業をひたすら分析してきませんでしたか?あれは別に革細工を上手になるためでも、七宝焼のプロになるためでもありません。
革細工とか、料理とか、作業に対し、工程という切り口で分けてみたり、技能や必要な機能という切り口で分析してみたり…そうやって一つの作業に必要な人や環境の要素や文化的価値などを考えてみたわけです。


ようは
私たち作業療法士は、人が作業をする様子をありのまま観察して分析すること(作業遂行分析)もできるし、
まだ未遂行の作業に対し、必要な技能や機能を工程ごとに分析し、その人が後々遂行する際に、問題とされること、利点として生かせることを予測もできるわけです。



座位保持困難な方に「旅行行ってみましょう!」
はできなくても旅行という作業を分析しておければ、クライエントの今から行う訓練や日々の生活が、その人の作業のどの部分に影響を与えるのか、常にクライエントと共有していくことができます。
そしてそのことが、クライエントが"その人"でいつづけるためにも、重要だと思っています。



「あなたは京都に奥さんと旅行することが夢だったんですね。どんな風に実現できるのか具体的にはこれから一緒に考えていきたいのですが、バスやタクシーの移動が多い京都では、20分以上揺られる中で座れることが重要です。まずは手を離して座れることから徐々にタクシーで座れることに向けて練習していきませんか」



その人の今を
過去と未来から切り離さないために


作業遂行を大切にみていける作業療法士になってほしい。学生達に期待しています。